水曜日のバスケ、綾香が珍しく休んだ。

俺は同じくポッカリ空いてた麻莉姉と組む。

「珍しいね」

麻莉姉が言う。
そう、俺はいつも綾香と組んでいた。

「どうしたんですかね、あいつ」

ほとんど俺の独り言。
麻莉姉は黙り込んで、逆に怖かった。

「麻莉姉は綾香のこと嫌いだったりしますか」

恐る恐る聞いてみると、麻莉姉は表情を変えることなく口を開く。

「綾香とデキちゃっていれば私も綾香のこと嫌いになれたんだけどね、仁は『好きじゃない』としか言わないんだよ」

こんなに開けっ広げに言われると、逆に清々しい。

「なんで?綾香が何か言ってた?」
「いや、俺はどう立ち振る舞おうかなと」
「なんで悠人が気にするの」

ふふっと麻莉姉が笑う。
麻莉姉は、仁さんと別れたというのに何も変わらなかった。
すごいと思った。
きっと女のプライドなんだろう。

「俺はみんなと仲良くしてたいです」
「いいんじゃないの、それで」

麻莉姉がパスをよこす。
綾香の数倍強い気がした。
仁さんが「あいつ強いから」とよくこぼしていたのが、分かる。

「でも、ま、みんな揃って男たちが綾香をチヤホヤしてたら面白くないよ、女としてね」

麻莉姉は笑った。

健康的な麻莉姉は、メンタルも健康そのもので、清々しいほど物事をハッキリと言う。
ハッキリしない仁さんと似合ってたと思う。

もう遅いけど。

俺は、今日はみんなでご飯食べに行かないで帰ろうと思った。