帰り、麻莉乃さんは仁さんの車だったはずなのに、龍平さんの車の助手席に座っていた。
あまりにも露骨で、でも龍平さんも真実を知ってるだけにあっさりと受け入れたようだ。

仁さんの車内。
助手席に大きなゴンさん、後ろに悠人と私。

「助手席、女の子が良かったなー」

相変わらずの仁さん。
それが半分本音で、半分冗談だということは分かる。

「あー、ごめん、悠人、うそうそ」

仁さんが笑いながらそんな風に謝るから、多分私も悠人も同じ顔をしたと思う。
ゴンさんがハハハと笑ってくれて助かった。

「早く付き合っちゃえばいいのにな」なんて大きなコソコソ話をしてる。

「ちょっと、俺のペースがあるんで黙っといてもらえますか」

やっと悠人が割って入ると、どこか私もホッとする。
この空気感は慣れ親しんだこの人たちじゃないと作れない。
ズカズカと踏み入れる加減が、それぞれに上手かった。

「え、まじでさ、まじでさ、ここそうなの?」とゴンさん。

「そうなんじゃねえの」

仁さんがすごく他人事っぽく言う。

思わず隣の悠人と目が合う。

「いや、今綾香待ちの状態なんでちょっと黙っといてもらえますか」

少しだけ笑みを帯びる口調で悠人がまた言った。
「はいはい」と前の二人が大人しくなる。

ミラー越しに仁さんと目が合ったような気がしたけど、逸らされた。
きっともう、私たちは完全に終わった。

穏やかに、高速を走り過ぎる。