「あーだめ、だめだ、気持ちいいー」

綾香がふらつく足取りで店を出る。

「おい、家までどうやって帰んだよ」

俺のそんな問いかけも無視して、店出た脇の植木沿いに座り込む。

「あーやーかー、綾香さーん」

そう肩を揺すってみるけど、眠そうな目と視線が交わらない。

ここから綾香ん家。
どうしよっかな。
ちょっと遠いんだけど、タクシーはさすがに無理。

綾香の正面にしゃがみ込みながら、今月のバイト代と飲み代を天秤にかける。

うん、無理。

ここから1キロはあるかな。

突然肩にボン、と手を置かれた。
振り向くとゴンさんのでかい顔。

「お前、まだイケるよな?」

捕まった。

「無理っす」
「全然平気じゃん」

隣に龍平さんが並ぶ。

「いや無理っす」

二人が並んでニヤニヤしながら俺を見つめる。

「無理ですよ、これ以上」
「全然いけるな」
「よし、俺ん家で飲むぞ」

肩を強引に引かれる。

嘘だろ。
ちょっと、ちょっと。

肩を押されるように歩く。

ちょっと、ちょっと、待て。

振り向きながら綾香を気にする。
そこに入り込んできた一人の姿。