綾香の家に寄ってから、駅に向かった時点で既に一時間が経過していた。

「悠人がいればミスんなさそう」

綾香が言う隣で、俺はアプリで乗換案内を調べる。

「ずーっと電車で行くしかなさそうだね、二時間」

検索結果に、まあこんなもんだろう、という納得と、やっぱり、という落胆を感じていた。
鈍行二時間は長い。

「まあ、悠人との方が楽だわ」

綾香が笑う。
目が合った。

「二時間もあの車にいたら息詰まりそうだった」
「それは、なんで」
「麻梨乃さん」

時計を見て、余裕をもってホームに向かう。
二泊三日の旅行なのに、大荷物がなくて新鮮だった。

「それは、仁さんと麻梨姉が一緒にいるのを見るのが嫌、とか?」

エスカレーターに乗せられながら、一段下の綾香に聞く。

「うん、なんだろ、罪悪感?」
「悪いことでもしたの」

俺が聞くと綾香が黙った。
それはエスカレーターに乗ってる間続いた。
無言の二十秒。