カツンカツンとスプーンが容器の底を掻く音がする。

「これで最後」と言って、かき集められたデザートの欠片たちをスプーンに乗せて食べさせてきた。
胃袋の中がクリームでいっぱい。
甘い。

「足りた?」
「お腹いっぱい」
「そっか」

そう言って私に腕を回してきてはぎゅーーっとゆっくり力を込めてくる。
優しくてきつい。
重くて軽い。
左側にすぐある仁さんの顔を見れない。

「ねえ」

仁さんはそう言って私に目を向けたのが分かった。
この人はずるい。
私から嫌がられない自信がある。

麻莉乃さんは手に入りきってしまったから、飽きたのかな。
だから次は私なのかも。
そして私も、賞味期限切れになったら廃棄されるのかもしれない。
コンビニの弁当みたいに、ゴミ箱にポイ。

思わず視線を上げると、仁さんと目が合った。
仁さんの口角がくいっと上がって笑う。

私は幸せになりたいんじゃなくて、ドキドキしてたいんだと分かった。
私は自分で望んで、今こうしてる。

顔を覗き込むように近づいてくる顔も、触れ合う唇も、絡み合う舌も、私の胸を高鳴らせる。
その心は分からないけど、今だけは私の人でいてくれたらそれでいい。

仁さんはまるでキャッチボールをするような軽さでキスをする。

その軽さが、なぜか心地よくて、楽しくて、私は好きだった。