「ごめんなさい、私、記憶がないんですけど、悠人から悠人ん家に泊まったって聞いてます」

あまりにもビクビクし過ぎてる、私。
嘘が下手くそ。

こんなんじゃバレる。

どうしよう、どうしよう。
でも私、仁さんと何もしてません。

「悠人はゴンさん家に朝までいたっていうんだよ?」

まじか。
そうだったのか、悠人。

あー、どうしよう。
麻莉乃さんの圧がすごい。
押し潰されそう。

ああ、バレる、絶対バレる。

っていうかもうバレてる気がする・・・!!

「練習するよー!」

パッと差し込むように入ってきた仁さんの声。

顔を向けるとベンチの前に仁さんが立ってた。

「そこで何してんの」

そう麻莉乃さんに言葉が向けられる。

「別に」

麻莉乃さんが私から一歩離れる。

仁さんと目が合った。

「練習するよ」

優しくそう言ってくれる。

「はい、行きます」

私もバクバクする脈を落ち着かせながら、用具箱に向かった。
キャッチボール用のミットを取る。

「綾香、一緒にやろ」

背後から声がして振り向く。
悠人だ。

「やろやろ」

私はボールも一つ取った。

ああ、今日は麻莉乃さんが心臓に悪い。