悠人は隣の席からカバンを避けてくれた。
そこに私が座る。

「昨日?」
「かなり飲んでたじゃん」

悠人とバッチリ目が合う。

「あのさ、全っっ然覚えてないんだよね」

そう言う私を呆れた目で「まじで?」と言う。

「すっごい二日酔い」

私はテーブルに肘ついて頭を支える。
悠人が無表情で見下ろしてくる。

軽く引いてるんだろうなあ。
悠人は真面目くんだもんなあ。

優しいけど。

そんな瞳。

「悠人ってさ、すっごい美人好きそうだよね」

ついそう言ってしまった。

「は?」
「なんか、完璧な美人」

悠人が無言になる。

この人、そもそも恋もしたことなさそう。

っていうか女が似合わないっていうか。
小学生のまま大学生になったっていうか。

「一口味噌汁ちょうだい」

私は悠人の定食の中のお椀に手を伸ばす。
「いいよ」って言われる前に、既に私は自分の元へ連れて来ていた。

一口だけ飲むと、カラッカラに干からびた体に染み渡る。

悠人がジッと私を見てる。

「なに?」
「別に美人好きじゃないよ」

遅。

「なんかとんでもない美人に片想いし続けてそう」
「嫌だな、それ」

味噌汁をトレイの上に戻す。

「女にとんでもない理想抱いてそう」

そう言うと悠人は「どんなだよ」と鼻で笑った。

「だってピュアそうだもん」
「ピュアって・・・」

そこで会話が終わる。
私の胃は一口の味噌汁で満たされた。

3コマ始まる前に生協で何か飲み物買ってこう。

私は適当に時間を見て、少し早めに席を立った。