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恋をすること自体への臆病さが少し緩和されると、途端に船見くんの人気が見えてくるようになった。


休憩時間のたびに違う女子生徒が船見くんに話かけに行っているし、放課後や休日の誘いも多いようだ。


なによりも、船見くんに好かれるためにみんな積極的だった。


休憩時間中にそんな様子をぼーっとして見ている、咲子が呆れた表情で近づいてきた。


「なにその力のない顔は」


「ん~、なんか、みんなすごいなぁと思って」


机に頬付えをついて答える。


それに比べてあたしがしてきたことは、船見くんにポッキーをあげるくらいなものだ。


あの時は船見くんに近づけて、会話もできて天国のように幸せな気分だった。


だけど船見くんは優しくてどんな女子生徒が相手でもないがしろにしないことがわかってしまった。


きっと、あたしのように『一緒にポッキーを食べない?』と行って来る女子生徒がいれば


船見くんは素直にうなづくだろう。


「この前はあんなに張り切ってたのに」


「だって、みんな可愛いし」


あたしは完全に机に突っ伏してしまった。


船見くんに声をかける女子生徒たちはみんな可愛かったり、綺麗だったりする。


あたしなんて足元にも及ばないのだ。