数秒たって、殿下は私の髪から顔を上げた。 そして私の顔を覗き込む。 案の定真っ赤な私の顔を確認した殿下は、何を思ったのか、私を抱き上げ、棚の上に座らせた。 「田上く……?」 私の戸惑いの声。 「何?声震えてるよ?」 楽しそうに殿下が言う。 でも私の声が震えるのは当然のことなのだ。 だってすぐ後ろは壁で、目の前には殿下、極めつけに私の両手は棚の上で殿下に握られているんだから。