ミレイナは目を伏せる。
 ジェラールがもふもふが好きなことはわかっている。現に、ジェラールはミレイナの垂れ耳を何かと触りたがる。

「違う。俺はミレイナがミレイナだから妻にしたいと思った」
「私が私だから?」
「そうだ。言っただろう? 俺はミレイナを愛している」

その真剣な眼差しに、今度は胸がじくじくと痛むのを感じた。

 ミレイナは王妃の器ではない。
 こんな茶番は一刻も早く止めるべきだ。
 それができないなら。やはり自分はアリスタ国に帰ってジェラールの目の前から消えるべきだ。

そうわかっているのに、『愛している』の一言に舞い上がり、少しでも長くこの人の隣にいたいと持ってしまう自分がいた。