「気に入ったか?」
「はい、とても」
「ミレイナが喜ぶと思ってここにしたんだ。よかった」

 ジェラールは口元を綻ばせ、にこりと笑う。普段は鋭く見える目元が和らぎ、優しげに見えた。その笑顔を見て、胸がキュンとするのを感じた。

(もしかしてここの椅子やテーブルも、私を喜ばせようと思って用意させたの?)

 今のジェラールの口調では、明らかにそう言っているように聞こえた。

「ジェラール陛下は、なぜこんなにもお優しくしてくれるのですか?」
「男が惚れた女を喜ばせたいと思うのは、当たり前のことだろう?」

 ジェラールはミレイナへと手を伸ばすと、頭をそっと撫でる。その手はミレイナのぴょこんと垂れ下がる耳に下りる。

「惚れたのは、私が獣人だから?」