ゴーランがくるりと向きを変え、全面開放された窓のほうへと向かう。

[外にいるの?]

 不思議に思いながらもゴーランについて行くと、「ミレイナ」と呼ぶ声が聞こえた。そちらを向くと、テラスでジェラールが手招きをしている。

(あれ? ここにこんな椅子とテーブルあったかしら?)

ラングール国の王宮には至る所に竜化した竜人達が飛び立ったり着地するための大きなテラスがあるが、椅子やテーブルは置かれていない。竜の姿になって飛び立ったり降り立つ際に、邪魔になるからだ。

「今日はテラスなのですね」
「ああ」

 ジェラールは片手で自分の隣の椅子を引くと、ミレイナに座るように促した。ミレイナは言われるがままにそこに座る。

 程なくして、侍女がティーセットや焼き菓子などを運んできた。美しく盛り付けられた菓子類が、テーブルに並べられてゆく。

「先日の祝賀会の際に、アリスタ国ではテラスに椅子やテーブルを置いて会話を楽しむ習慣があると聞いた。たまには気分が変わっていいだろう?」
「はい」