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そうしてその数時間後、ミレイナはジェラールの元に向かっていた。
「失礼します、ミレイナです」
ノックをしてからドアを開けると、いつものようにゴーランが尻尾を振りながら歩み寄ってくる。
[ゴーラン、こんにちは]
[今日は遅かったな]
[うん、ちょっと]
ミレイナはへらリと笑う。
国交正常化記念祝賀会に恥ずかしくないようにする〝礼儀作法レッスン〟から〝お妃教育〟と名前を変えてから、これまで以上に講義内容が難しくなった。
なかなか課題がこなせず、時間がかかってしまうのだ。
[あれ? ジェラール陛下は?]
ミレイナは室内を見渡す。執務机にも、いつもお茶をするときに座っているソファーにも、ジェラールはいなかった。
[ジェラールなら、そっちにいる]