「そういえばさ、最近になって、時々町中で魔獣や動物を連れている人を見かけるんだよね」

 リンダが思い出したように顎に指を当てる。

「魔獣を連れている? 従獣ってこと?」
「うーん、違う気がするわ。フェンリルよりもっと小さい魔獣や動物が多いの。多分、陛下や側近の方が魔獣を連れているのが最近知れ渡っているから、真似をしているのかも」
「ふーん」

 要は、ペットとして魔獣や動物を連れているということだろうか。ミレイナが知る限り、ラングール国には魔獣や動物を可愛がるために飼うという風習はなかった。

「国交正常化記念祝賀会の際も、ご来賓の方に動物を連れている方が何人かいらっしゃったし、ますます増えるかもね」
「うん、そうだね」

 ミレイナは相づちを打つ。あの国交正常化記念祝賀会にはラングール国と交流のある国々からも来賓が来ていたが、その中にはペットを連れていた方もいらした。

「さ、行こっか」

 リンダが麻袋を持ち上げる。

「ミレイナ、頑張って。私、応援しているよ」

 王宮に向かおうとした別れ際、リンダにぱちんとウインクされ、ミレイナは眉尻を下げたのだった。