(平常心! 平常心!)

 必死に自分にそう言い聞かせる。
 けれど、ふとしたときに脳裏に甦るのは、大好きな人の甘い声。

『お前を愛している』

 ジェラールに告げられた言葉、さらにキスされたことまで思い出し、ミレイナは身もだえる。しかも、一回だけじゃなくて二回も!

「あああー!」
「ちょっ、ミレイナ! どうしたの!」
「リンダー! 私、死んじゃうかも!」
「死んじゃう!?」
「信じられないことが起こって、本当に理解不能だよー」

 あの舞踏会から三日が経ったというのに、心は落ち着くどころかどんどんとかき乱されてゆく。

「ちょっと落ち着いて、ミレイナ。何があったの!?」

 リンダに諭されて、ミレイナは「実は──」とぽつりぽつりと事情を話す。