二日前にレッスンを受けた際に何とかできるようになったはずなのに、早くも体が忘れていた。
「仕方ないわね。では、マリベルさんの見本を見て。マリベルさん、よろしいかしら」
フローラ先生は同じ部屋にいたひとりの貴族令嬢──マリベル=スターラックに声をかける。
ミレイナの行儀作法の練習の際には、毎回誰かしらの貴族令嬢が練習相手として同席することになっている。今日同席しているマリベルは、普段は竜王であるジェラール付きの侍女をしている。
「もちろんですわ」
見本を見せるように言われたマリベルはにこりと微笑むと、立ち上がる。
そして、足音も立てずにまっすぐにフローラ先生の元に歩み寄ると、その場でスカートを摘まみ優雅に腰を折った。
(やっぱり綺麗だな)
一連の動作を見たミレイナはそう思った。
艶やかな焦げ茶色の髪に大きなブルーの瞳。その整った容姿も、マリベルの立ち姿を美しく見せている要因のひとつかもしれない。



