「ジェラール陛下、この度はおめでとうございます」
「ああ、ありがとう」

 次々にジェラールの元に、国内の貴族が挨拶に来る。そしてその全員が、ジェラールの隣にいるミレイナを見て、「ところでこちらの女性は?」と首を傾げるのだ。

「こちらは、ミレイナだ。我が国の王宮で働いている唯一のアリスタ国民だ」

 ジェラールはミレイナの腰を抱き寄せ、相手に紹介する。

「なるほど。私はカガール地方を治めている侯爵のルセット=スタイです。以後、お見知りおきを」
「ミ、ミレイナです。よろしくお願いします」

 名前を言うだけなのに、緊張のあまり舌を噛んでしまう。散々練習したはずのお辞儀も、上手くできているのかどうか、よくわからない。

「ジェラール陛下、ミレイナ!」

 不意に、どこかで聞いたような声がした。そちらを見ると、片手を上げてこちらに手を振る男性がいた。

「リックさん?」

 ミレイナは、懐かしさに思わず声を上げる。
 そこには、リックこと、アリスタ国の王太子であるパルデリック=アーレンツがいた。
 リックはつかつかとミレイナとジェラールの元へと歩み寄る。