おろおろするミレイナに、ジェラールは言葉を続ける。

「ミレイナは獣人だろう? なるべく早い時期から長時間触れあって、気配を移しておきたい」
「え? 気配を移すって?」

 ミレイナは意味がわからず、首を傾げる。

「竜人は長命だろう? 番った相手が異種の場合は、なるべく一緒に過ごして気配──自身の魔力を移すんだ。ずっと一緒にいられるように」
「え、それって……」

 ミレイナは驚いてジェラールを見返した。

(もしかして、寿命の差が縮まるってこと?)

 ミレイナはアリスタ国のクレア王女から竜人は長命なので、自分は普通の人と一緒になりたいと言っているのを聞いて、てっきりその差は縮まることがないのだと思っていた。
 ジェラールはそれを聞いて、すぐに「ああ」と言った。

「竜人は長命な故に、そういうことができる。だが、どれだけ番った相手の寿命が延びるかは、どれだけ長い時間触れあって寵愛を与えたかによる」
「あ、だから……」

 ジェラールの言葉が意味するところはつまり、政略結婚などで愛がなく、ほとんど接触がないと通常の寿命で死ぬと言うことだ。

 ミレイナはようやく理解した。
 そして、ずっと自分が誤解していたことに気付いた。