◇ ◇ ◇

 メイド長の部屋は、王宮の一階にある。
 廊下を歩いていたミレイナは、前方から楽しげな声が聞こえてくることに気付いた。目を凝らすと、若いメイド達が楽しげに話しているのが見えた。

(あれは、マリベル様?)

 前方から近付いてくる四人のメイドのひとりはマリベルに見えた。

(マリベル様も心配していたかもしれないから、無事に帰れたってお知らせしたほうがいいわよね)

 昨日馬車に乗せてくれたマリベルは、ミレイナが行方不明になったことも知っているはずだ。きっと、心配してくれていたはずだ。

「マリベル様!」

 ミレイナが名前を叫ぶと、前方の四人のメイド達がこちらに注目する。
 ミレイナを見つけたマリベルは、驚いたように目を見開いた。

「昨日はご迷惑をおかけしました。色々ありましたが、無事に戻れました」

 駆け寄ったミレイナは頬を紅潮させながら、頭をぺこりと下げる。