(すごく心配してくれていたんだろうな)

 ジェラールがどんなに心配してくれていたのか、痛い程に伝わってきた。
 ミレイナはジェラールを安心させるように、その広い背中に自分の両腕を回した。

「陛下、ご心配をおかけしました」

(きちんと言わないと……)

 ミレイナは目を閉じると、勇気を奮い立たせる。
 ジェラールから離れると、ベッドの上に正座した。

「陛下、お話があるんです」

 いつにないミレイナの真剣な様子に、ジェラールもこれは何か大切なことを話そうとしていると感じ取ったようだ。上半身を起こしたまま、ミレイナを見返す。

「昨日は本当に申し訳ございませんでした。あんなことになるなんて知らなくて」
「それは、ミレイナのせいではないだろう」
「はい。でも、あんなことになってすごく後悔したんです。散々陛下のお気持ちをはぐらかして逃げていたくせに、いざ人間に戻れないかもしれないって思ったときに──」

 話ながら、感情が昂ぶるのを感じた。

 ずっとミレイナにまっすぐな愛情表現をして『妻になってほしい』と言い続けたジェラールからなんだかんだと言い訳して逃げていたのはミレイナだ。
 それなのに、ジェラールは昨日、ウサギから元に戻れないかもしれないミレイナに変わらぬ愛情を示してくれた。

 そして、ウサギ姿から戻ることができなければ彼の側に立つことができないのだと悟ったときに、どうしてジェラールの思いに素直に応えなかったのだろうかと後悔ばかりが込み上げてきた。