ジェラールは走るゴーランの後を追う。
 しかし、すぐにおやっと思った。てっきり王宮の方向に向かうと思っていたのに、途中で違う方向に走り出したのだ。

(これは、ウォルトの屋敷の方角か?)

 ゴーランが走る方角は、王宮とは反対方向だ。そしてその大通りをまっすぐに行けば、今日ミレイナが訪れたお茶会会場──オルコット邸がある。

(どういうことだ。王宮に戻ったのではないのか?)

 先ほどのマリベルの話では、王宮の馬車乗り場の手前でミレイナは姿を眩ましたと言っていた。

(王宮から、もう一度オルコット邸の方角に自力で向かったということか? あるいは──)

色々と可能性が思い浮かんだが、まずはミレイナを探し出すことが先決だ。ジェラールは走るゴーランを追いかけ、翼を羽ばたかせる。

 間もなく、走っていたゴーランが立ち止まる。そして、辺りの匂いを嗅ぐと、道の脇にお座りをした。

(見つけたか?)