ジェラールは険しい表情のウォルトを見つめる。

「はい。スザンナもそう申しておりましたし、屋敷のものも皆そう言っていたので間違いありません」

 ここにきてジェラールも、ふたりの深刻そうな表情の意味を理解し始めた。

「帰りの足は?」
「スザンナに確認したところ、スターラック家の馬車に乗ったと。当のマリベル嬢に確認したところそれは間違いないようなのですが、王宮に着く直前で急にウサギ姿に変わって馬車から飛び降りると走り去って行ったと言っております。てっきり王宮に戻ったと思っていたようで、報告が遅れて申し訳ないと消沈しておりました」

 ウォルトが今わかっていることを答える。

「ウサギ姿に変わって走り去って行っただと? 王宮に戻っていないなら、どこに行ったというんだ?」

 ジェラールは怒りを孕んだ声で問い返した。言葉を詰まらせたラルフとウォルトを前に、苛立ちが募る。

「すぐに探しに行く。だがその前に、もう一度マリベル嬢にどこでミレイナが走り去ったのかを確認したい」
「かしこまりました。すぐに来るように──」