「魔獣を連れて歩いたのは俺が最初だ。俺が原因だと言うならまだしも、ミレイナは関係ないだろう」

 大方、魔獣の利口さや愛らしさが見直される原因となったミレイナが諸悪の根源だとでも言いたいのだろう。完全なる言いがかりだ。

「お怒りをお鎮めください。そういうことを言っている者がいるということを、お知らせしておきたかっただけです」

 ラルフはあからさまに不機嫌になったジェラールを宥めるように頭を下げる。

「引き続き、調査に努めます」
「ああ」

 ラルフはジェラールに伝えるべきことを伝えると、部屋を出る。
 ひとりになった執務室で、ジェラールは息を吐いてテーブルに置かれた茶を飲む。機嫌が悪いせいか、それはひどく苦く感じた。