(こちらが本題か……)

 先ほどまでミレイナに贈る耳飾りを手配しようと上機嫌だったジェラールだが、急激な不快感が身のうちに広がるのを感じた。

 この手の話をされるのは、ブレンダンが初めてではない。彼らは口を揃えて異国の平民など、王妃には相応しくない。せいぜい愛妾に留めるべきだと言う。

「魔獣は俺達が思っている以上に賢い。理由もなく襲ったりはしない。それに、ミレイナは〝得体の知れない者〟ではない。アリスタ国民で、今はラングール国の王宮で働いているウサギ獣人だ」
「しかし、王妃となると話は別です。物珍しさでちょっかいを出されているのなら、そろそろお止めになるべきです。愛妾にするなどの方法は──」

 また同じことを言われ、ジェラールの心は一気に凍てついた。

「黙れ。俺は本気だ」

 ジェラールの声が一段低くなる。
 怒りから、部屋の温度がぐっと冷え、足下から氷柱が立ち上がる。