「...なんで?」
「2年前の今日、俺が寝込みを襲いました」
今日みたいに睦の部屋に来てみたらここですやすや眠っててさ、何度か
名前呼んでもぜんぜん起きないし、まあ色気はなかったけどなーんか可愛
かったんだよねー。で、まあ誰も見てないしいいか、ってことでありがたく
いただきました。あ、だから明日から学校で友達に『私はキス経験済みよ』
っていっちゃっていーよ。どうせ友達には睦はまだコドモだって思われてる
んだろ?
頭の中が真っ白になった。どうせなら素敵な人からの突然の告白とかで
真っ白にしたかった。
最悪だ。なにが最悪って、圧倒的に恋愛経験の少ない私は、たかがキス
ひとつでさっきまでただのお隣さんだったはずの直也がちゃんと男の子に
見えてしまっている。さらに頭が痛いのは、直也がそんな私の心の動揺を
簡単に察知できるくらいの恋愛経験を積んでいるということだ。
「でもさすがに覚えてないってのもアレだな、よし」
いや何もよくないです。私の左側に座っていた直也と目が合った瞬間、
いくらおこちゃまな私でもこれから直也が何をしようとしているのか
くらいはわかります。
(それなのに、動けないのはどうしてだろう)
「コレが睦にとって本当のファーストキスってことで、どう?」
「...事後にいわれましても」
「えっなに、もう1回してほしいって?」
「アホか」
幼なじみとして約10年間一緒に過ごしてきた私たちに突然舞い込んだ
新しい感情。私たちの未来を解くことは、きっと期末テストで全教科
満点とるよりも難しい。

