「もっとこう、お互いの存在が空気のように自然になったころ、結婚した方がよかったかもしれないです。

 心臓が持たないので」
と汐音が白状すると、求は顎に手をやり、

「……なるほど」
と頷いた。

 あっ、しまったっ。
 じゃあ、やっぱり、この結婚はなかったことしようとか言われるかなっ、と心配したのだが、求は、

「空気のように欠かせない存在になるのはいいが。
 いてもいなくても気にならない存在にはなりたくないな。

 っていうか、俺はならないと思うぞ。
 この先もたぶん。

 いつも、お前の言動にドキドキ……

 いや、ハラハラする気がする……」
と呟きながら、求はキッチンの方を見た。

「あっ、しまったっ」
と汐音は焦げ臭い匂いがしはじめたキッチンへと急ぐ。