「……人の想いなんてわからない、わかるはずないよ」



心の奥底から絞りだすような声に、ハルは。



「それでもお前は、言葉織だよ。詩織(しおり)さんが亡くなっても想いが終わるわけじゃない。

寄り添いながら理解していけばいいじゃないか。だから、わからないなんて匙を投げるな。詩織さんの想いから、俺の想いから……逃げないでくれ」



雪の舞う静かな夜だった。



庭先にハルは立っていた。
一体どこから飛んできたのだろう、こんな寒い季節に薄着のままで。


一方自分はと言えば……先程まで暖のある和室にいた。ハルが来た知らせを受け、渡り廊下に出てみれば――走ってきたのか、息を切らせていた。



ハルは泣かない。


ハルは、泣けないんだ。



私がいつも泣くから。