言葉織(ことばおり)生業(なりわい)として生きてきた母から口酸っぱく教えこまれた言葉。



生命が燃え尽きるまで、決して人の悪口を口にしなかった母。見事なまでの生き様だった、そのためお葬式では人が後を絶たなかった。頭を下げたりお礼の言葉をのべながら、どこか他人事のように眺めている客観的な自分がいた。



母が亡くなって、まるで蝉の抜け殻のようになってしまった私を周りは心配してよく気遣ってくれたものの、ずっと言葉は虚しく響き聞き流す日々。



食事もほとんど喉を通らず。



そんな日々を過ごす中――母によく目をかけられていたハルが来た。孤児だったハルは、母の目に止まりやってきた男の子だ。今ではすっかりイケメンと呼ばれる部類になってしまった。