君じゃなきゃ。



駅から会社はそう遠くなく、15分もすれば到着した。

夜の会社を外から見上げると小さな明かりがポツリポツリとついている。

「よし、まだ誰かいる!」

勢いをつけてエレベーターまで向かった。


人気のない会社は物音一つせず、薄暗いエレベーターホールは冷え切っていて少し怖かった。


「やっぱり健人についてきてもらえば良かったかな……」

エレベーターに乗り込むと「閉」のボタンを一回押せば済むところを何回も連打する。

「ササッと帰ろう……」

階数の表示を不安気に見つめながら19階へ到着するのを待った。


チンッ。


日中はあまり聞こえないエレベーターの到着音もやたらと大きく感じる。