君じゃなきゃ。



そのままあたしの手を握って自分の唇へ移動させ、手のひらに軽くキスを落としてくる。


駅にチラホラ人はいるけど……今日は許してあげよう。


「帰ろっか……」

あたしの言葉に健人は小さく頷いて

「うん、今日はさくらを家まで送るよ」

なんて満面の笑みで言ってくれた。


「いいよ!健人が降りるの一つ前の駅じゃん!悪いよ……今日泊めてあげることもできないし……」


あたしと健人は電車が同じでも降りる駅が違う。

あたしを家まで送ると健人はまた電車で戻らなきゃいけなくなる。


次の日が休日のときは送ってもって、そのまま泊まってもらうこともあるけど……明日は普通に仕事の日だからそういうわけにもいかない。