君じゃなきゃ。



しばらく二人してメグミが抜けて行った改札を見つめていた。


「で、なんで俺に言ってくれなかったの?」

いくらか時間が過ぎたころ、健人があたしに言ってきた。

「言わなかったわけじゃないよ?言うタイミングがなかっただけで……」

本当のことだった。

プロジェクトが決まってからバタバタ忙しくて、健人とまともにデートもでず、メールや電話でさえも少なくなっていた。


「……朝、早く出勤したのは……先輩のため?」


健人の方を見上げるとシュンとした顔をしている。

元々子犬のような顔なのに、そんな顔をしていると雨に打たれている捨て犬のようだ。


あたしより20センチは大きい健人がなんだか小さく見えた。