「ダメっ……え?」 先輩の前でまた、キスなんか見せたくなかったあたしは身構えたが、健人の腕はあたしではなく別のものを掴んだ。 「え?僕?」 掴んだのは先輩の腕。 掴まれた先輩もまさか自分が引き止められるとは思っていなかったらしく、キョトンとして人差し指で自分を指した。 「俺!先輩の分までさくらを大事にしますんで!」 ……健人……! 「だから先輩も大事な人……この人じゃなきゃって思える人。早く見つけてください!」 それだけ言うと健人は、顔を真っ赤にしながら23階へと上がって行った。