君じゃなきゃ。




「ここで。相川さん抱き締めちゃったでしょ?」



忘れていたはずのドキドキが再び蘇る。

鼓動が……急激に速くなる。


「あのときは勢いで抱き締めちゃってさぁ。でもよく考えたら職場だし。まずいことしたなって反省したよ」


先輩は反省の色をにじませながら笑う。


「き……気にしないでください。大丈夫ですから……」


先輩、本気だなんて言ってたけど、あたしはちゃんと冗談だって理解してるし。

彼女の浮気現場見ちゃって弱ってただけだろうし……。


「なら良かった……。でも自分の行動に僕自身が驚いたね。まさか職場で女の人に触れたくなるだなんて」



……それって……あたしのこと……触れたくなったってこと……?


でも女の人に、だから。


あたしじゃなくても良かったってことでしょ?