君じゃなきゃ。



「ちょっとごめんね」


そう言って先輩はあたしの髪止めを外した。


首筋は完全に隠れて、肩にフワッと髪がかかる。


「相川さんは髪をアップにしてるのもいいけど……おろしてるのも似合うね。今日は気分転換にそうしてたら?」


なんて言って柔らかく笑ってくれる。


あたしの中でトクンと心が静かに脈を打つ……。



「じゃ、お茶入れてくるから」


先輩は何事もなかったかのようにお茶を入れに行った。


髪があたる首筋がなんだかこそばゆい。



……でも……なんでさっきはあんなに怒ってくれたんだろ……。


仕事場で何してんだって感じだったのかな?


それとも健人に失望したから?



それとも……





……あたしのため?