君じゃなきゃ。



「お茶入れてくるね」

そう言ってスッと立った先輩があたしの後ろを通る。


「相川さんもいる~……あれ?相川さん首、どうしたの?」

「え?」


振り返ると先輩が自分の首を人差し指でちょいちょいと示して

「首。赤くなってるよ?」

「あ……」


……健人だ。

健人が会議室出て行く前……してきたキスのせいだ……。


髪をアップにしているあたしの首には目立つ跡だった。


虫刺されとでも言えば良かったのに、咄嗟のことに頭が回らず顔を赤くして俯くしかできなかった。


「……相川さん……まさか……」




どうしよう……先輩に勘付かれた……。


仕事が大変なときに何してんだ。……なんて



絶対呆れられるよ……。