「見間違えかなって……思えなかったけど……思おうとしたんだ。それでもダメだね、僕は……確かめずにはいられなかったんだ、彼女かどうか……」
「……確かめたんですか?」
「うん、彼女の携帯に電話してみたんだ。着信音が鳴ったよ。ホテルから出てきた女の人の携帯から」
先輩は乾いた笑いを漏らしたあと、さっき床に置いたアダプターをまた取り上げた。
「その電話に彼女は出たんですか?」
「出られる前に僕から切ったよ……。僕は臆病者だから」
「そんな……」
誰だって恋人の浮気現場を目の当たりにしたら臆病にもなる。
目の前の事が勘違いであって欲しい気持ちと事実を確かめたい気持ちが何度も入り混じるだろう……。

