誰一人として。判らないのだらふ。

「…………却説。今日も頑張らないと、ね…。」

そう小さく吐き出した言葉とは裏腹に。

歩行する足取りは何故だか重く、鉛の如く動かずにいた。

動かずに居た所為か叱責を喰らう。

何て、誰が思うだろうか。

「…早く支度しねぇと遅れんぞ。唯でさえ行動が遅えからな、手前は」

「………先輩には言われたく無いです。」

静寂。静かなる沈黙が充満する。

「帰ったら覚えて置けよなぁ、手前。」

「……………判りましたから、早く行きましょう」

否、誰も思い等。しないだろう。思い───など。……しないのだろう。

特にこの世界では。誰一人として。

何て。空想に耽る。

そして適当では無いが。軽くあしらう。

あしらったその後で細く息を漏らし、彼の人の背を追おうと。

不格好な足音を数回程、響かせる。

そう──《本部》へと帰還する為に。

『何時も先に往くのは後悔で有り、懺悔である。

果てしなく続く路の先で待ち受けるは何であらふか。』