カントの外れにある古びた教会に、黒い一角獣《ユニコーン》に引かれた客車が乗りつけた。

 馭者をしていた黒髪の青年が昇降口をひらくと、淡い水色のドレスを身につけた美しい少女が下りてくる。
 その後ろには、同乗していたショートヘアの女性が連なる。青年と女性は同じデザインの黒い騎士服を身につけていて、ほほえむ少女の左右で目を光らせた。

 少女は、王位継承者として注目されているルルーティカ・イル・フィロソフィー王女殿下。二人の若者は、まだ聖王になっていないにもかかわらず、彼女に忠誠を誓った近衛だという――。

 この日、王女が教会を慈善訪問するという情報をつかんだ新聞記者は、魔晶石を入れたライトを照射して、淑やかに歩く姿を激写したのだった。

「――ぷはっ! 窒息するかと思った」