「お兄様のお下がりなら、華美とまではいかなくても、しっかりしていそうね」
「あとは、オーディエンスも用意しましょう。ルルーティカ様が国民に愛されていると示すため、馬車が通る沿道で『ルルーティカ様万歳』と両手をあげたり、フィロソフィーの国旗を振るような――」
「待って。それはさすがにやりすぎ!」

『金貨があれば愛すら買える』とはノアの信条だが、ルルは人の心までは動かせないと思う。人気があるように見せかける人員を雇うのは、課金ではなく賄賂だ。

「騎士服は作りましょう。客車もお兄様のものを借りれるならそれで。でも、わたしが聖王にふさわしい人格者だって国民を騙すのは違うと思うの」

 ルルは、毛布で丸くなっているのが一番得意な、だらしないダメ王女だ。
 巣ごもり生活を平和に送ることだけ考えて生きてきたので、為政者としてならジュリオの方が有能かもしれない。中身で張り合ってもしょうがないのである。