アンジェラが言うように、自分がいなければ困ってしまうくらいに、甘やかしてしまいたくなる。
 異性なので、身の回りの世話は他人に任せるしかないのが口惜しい。

 ノアは、回した腕にきゅっと力を込めて、ルルの髪に額を寄せた。

「貴方のいちばんの従者は、私ですからね?」
「うぅ~? もう、ユニコケーキは十分よ、ノア……」

 返事からすると、ようやく眠りに落ちたようだ。しかも、ノアからユニコケーキを食べさせられる夢を見ているらしい。

 腕を解けば、ごろんと寝返りしてノアの方を向いた。
 健やかな寝顔は、甘いクリームを口に含ませた時のように眉が下がっている。

 こんな表情までかわいらしくて困る。
 息を吐いて自分を落ち着けたノアは、ルルの崩れた前髪のあいだから、額に走った古傷を見た。

「……今度こそ、お守りします。この身に変えても……」

 傷のうえにキスを落として、再び抱きしめる。ルルは目を覚ますことなく、朝までノアの腕のなかで寝息を立てていたのだった。