天から飛来する一角獣は、魔力を有した人間に懐くと言われている。心の清らかな人間が好きで、良き聖王は一角獣に愛されると昔から言われてきた。

 ルルの兄イシュタッドは、聖騎士よりも上手く一角獣を扱うので有名だったから、あながち嘘ではない。

 記録されている最古の戴冠式では、『一角獣の王に選ばれた者が聖王となった』との記述がある。
 現在では、枢機卿から認可を得た王族がなっているので形骸化がいちじるしいが、一角獣にそっぽを向かれると王族であることすら疑われかねない。

 ルルは、一角獣の専門書を開いて、びっしり書かれた文章の中ほどを指した。

「ここに、清らかな人間は魔力がなくても友達になれるって書いてあるわ。だから、わたしも懐いてもらえる可能性はあると思うの。あとは、こっちの地方文化史を読んだら書架に返すから」

 ルルは、毛布に包まって本を開いた。