アンジェラが作った夕食はとてもおいしかった。
 澄んだスープと白身魚のムニエル、花根のピクルスと木の実を使ったプチデセールは、どれも聖王城での暮らしを感じる懐かしい味だ。

 城に入り込んだ際に、『王女を暗殺するだけでは割りに合わない』として、厨房に貼ってあったレシピをくすねていたらしい。

 部屋に戻ってネグリジェに着替え、ベッドにあがっていそいそと眠る準備を整えていると、一晩見張りをするというノアがやってきた。

「ルルーティカ様、これからお眠りになるのですよね?」
「そうよ」
「なぜ私物をベッドに広げていらっしゃるのですか」

 ルルーティカは、ベッドヘッドを軸にして180度、半円を描くように本や手紙、金貨を貯めたポシェットを並べていた。

「これは広げているんじゃなくて配置しているの。毛布に丸まった状態で手を伸ばして、ギリギリ届く辺りに円くおいておけば、毛布から出なくても健康で文化的な最低限度の生活が送れるのよ!」