ノアが言っているのは、ルルがきまぐれにあげた金貨のことだ。
 毛布に紛れ込んでいたのを興味深そうに見ていたので一枚。もう一枚は、魔力を貸してもらうための対価だった。

 だから、あなたを信頼していますって証ではないんだけど……。頑ななノアには、話しても通じない気がする。

 まだノアの性格をよく知らないアンジェラは、不服そうに反論した。

「はぁ? 回数関係あんのかよ」
「ある。金貨は愛すらも買えるのだから、二回いただいた私の方が、ルルーティカ様に乞われている」
「んじゃ、三週間たてば、あたしの方が上になるな。一週間につき、金貨三枚の契約だし」
「…………………………」
「睨むなよ。くやしかったら、お前もそんくらいもらえば? そんじゃ、あたしは給料分の仕事にとりかかるんでー」
 
 嫌な雰囲気で会話が終わってしまった。
 ルルがビクビクしながらノアを伺うと、紙袋をもって厨房に向かうアンジェラに、無言のまま眼力を飛ばしていたのだった。