きっと顔は真っ赤だろう。慈しむようなノアの視線のせいだ。

(悪いのはノアよ。クールぶって見えるのに、こういうことを恥ずかしげもなくするんだから!)

 パクッとケーキを口に入れると、不満はパッと消えてしまった。

 ノアの手で食べさせてもらったケーキは、一口目より甘かった。
 お砂糖の甘み以上に、胸がきゅんと鳴るような甘さだった。

「――ちっくしょう、あのゴロツキどもめ!」

 乱暴な足どりで食堂室に入ってきたのはアンジェラだ。苛立った様子で、リンゴやバゲットの入った紙袋をテーブルにドンと置く。

「市場で買いだししている間中、あたしのことを尾行してきやがった。金で雇われて、ルルーティカの居場所を探してるんだ。ここはオンボロ屋敷に見えるとはいえ、ねぐらがバレちゃ困るからまいてきたけど――――って、なにしてんだ、お前ら」