博士にとって、よほど自慢の品だったのか、食堂室のテーブルはガラスケースを囲むように配置されている。

 窓を背にして座ったルルのまえに、ノアはカップを置いた。
 もったりした生クリームに、水色や桃色、黄色の星型シュガーをたっぷり振った、苺のカップケーキもいっしょに。

「どうぞ、カントで流行っているお菓子です。苺を一角獣の角に見立ててデコレーションしていることから、『ユニコケーキ』と呼ばれています」
「うわぁ、かわいい」

 一口食べると、ふわふわのスポンジとクリームの甘みにほっぺたが落ちそうになった。自然とティーカップに手が伸びる。
 カップは先日の買い出しで新調したものだ。ハンドルが羽根の形になっている。
 温かな紅茶を飲みこむと、ルルの心の深いところから溜め息がもれた。

「おいしい……」
「お気に召してよかったです」