「そのキルケシュタイン邸に身を潜めていました。あの家には、博士が残した強い魔晶石があるので、魔力でぼろ屋に見せかけていたのです」

 ノアは淡々と答えるが、お屋敷に魔法がかかっていたとは初耳だ。安全に巣ごもれる場所がカントにあるというのは、ルルにとって不幸中の幸いだった。

「ヴォーヴナルグ団長、わたしたちは王城を出て身を隠しながらお兄様を探すつもりです。決して、他言されないようにお願い致します」

 ルルーティカがこいねがうと、ヴォーヴナルグは白い団服の裾をひるがえして、その場にひざまずいた。

「第一聖騎士団が団長ヴォーヴナルグ、聖王イシュタッドに忠誠を誓った身なれど、ときは今。ルルーティカ王女殿下の身の安全のために尽力いたします」

 こうして、ルルは新たな仲間を連れて、キルケシュタイン邸に帰ることになったのである。