ルルは申し訳なさそうな顔で、ナイフでできた切れ目から金貨を取り出した。

「持ち歩く分をコルセットの下に詰めておいたの。令嬢みたいに手さげやポーチに入れて歩くと、ジャラジャラ鳴りそうだったから……」

 大聖堂に華麗に登場した王女が、一角獣《ユニコーン》に揺られるたびに金貨がこすれる音を立てていたら様にならない。

 けれど、外の世界は唐突だ。
 どこで入り用になるか分からないので、最低限の金貨は身につけておきたい。ルルのこだわりが、結果的に命を救うことになった。

 ヴォーヴナルグは、ルルの奇態を見て若干引いている。

「ちまたで『聖女』と呼ばれている王女殿下が、まさか金貨好きの守銭奴だとは……」
「団長、我が主をおとしめる発言はつつしんでください。ルルーティカ様は、ただの守銭奴ではありません。夜な夜な貯まった金貨を数え直して、金額ににやにやするタイプですが、使うべきところには使います」

 遠回しにディスってくる二名は、あとで注意するとして……。
 ルルは、蹴られたお腹をおさえてうずくまるメイドを見た。悔しげな表情で、ぶつぶつとつぶやいている。