ノアは将来を期待されていたようだ。そのため、ヴォーヴナルグ団長自身が退団を撤回するようよう説得にきたのだろう。
 置き手紙一つで自由になれると思ったノアも相当に変わっている。

 騒々しい団長の後ろから、フリルキャップを被ったメイドが現われた。

「お取り込み中、失礼致します。王女殿下にお茶をお持ちしました」
「ルルーティカ様は部屋の中におられます。私は、この人の相手をしなければならないので、給仕をお願いします」
「かしこまりました」

 話が聞こえたルルは、慌てて毛玉を解いてソファに座った。毛布はラグのように足下に敷いて、だらけた痕跡をなくす。
 いつでも真人間のフリはできるようにしておくのが、巣ごもり上級者なのである。