それで相手が分かったのか、ノアはすんなり扉を開けた。

 扉を叩いていたのは、聖王城を守る第一聖騎士団の団長ヴォーヴナルグだった。白い騎士服の上からでも、筋骨隆々とした体型なのが分かる大男だ。

 ヴォーヴナルグは、ノアを見るなり太い腕で掴みかかろうとした。

「仕事をほっぽって、今までどこに行ってやがった、コラーーー!」

 ノアは、ヴォーヴナルグの手を掴んで反論した。

「騎士団を抜けるという置き手紙は残したでしょう。たまには素直に部下の意見ぐらい聞いてください。あと、声がうるさいです」
「普段から聞くようにしてるわ! だが、退団は承服しかねる! お前ほど優秀な聖騎士に抜けられたら困るんじゃボケーー!」
「うるさいって言ってるのが聞こえないんですか?」

 ギリギリと取っ組み合う二人を、ルルは衝立の影からハラハラと見守っていた。