演説席に手をついたジュリオは、長めの前髪を手で払った。
 キツい香水が大聖堂の端までかおって、議員席の司教たちは顔をしかめる。

 マキャベルは、ジュリオの勤勉さを見込んでいるようだ。
 しかし、ガレアクトラ帝国軍の軍服を身につけた彼の、ニヤリと上げた口角やセットされた茶髪からは、どことなく遊び人の空気がただよっている。

「聖王イシュタッド陛下は名君だったらしいが、ガレアクトラ帝国で育った僕から見れば子どものお遊びみたいな政治だよ。僕が聖王になったなら、今よりずっと稼げる強い国にしてみせる。君たちだって、一角獣《ユニコーン》の飛来地を売りにした観光業ばかりの貧しい暮らしはもう嫌だろう? ガレアクトラ帝国との繋がりをよりいっそう深めて、この国を栄えさせようじゃないか」

 演説をきいた司教達は、ジュリオへの期待と不安にさざめいた。

「素晴らしい演説だ」
「ガレアクトラ帝国の王子を奉りあげて、国を乗っ取られないか?」
「他国の王子を連れてこなくても、イシュタッド陛下の妹君である王女がいるのに……」